新手法の取り込み判定に「過去に意図して外した設計の再導入か」を却下軸として足す
設計判断
開発手法
プロセス改善
判断
原則
新しい方法論や語彙が流行したとき、既存手法との対応表を作って「すでにやっている分」を差し引き、残った差分だけを検討する — ここまでは定石だが、これだけでは足りない。残った差分の中に、過去に自分が実測や事故を根拠に意図して外した設計が混ざることがある。新語彙は「まだやっていないこと」として魅力的に見えるため、なぜ以前それを外したかを能動的に思い出す仕組みがないと、静かに巻き戻す。
判断基準
- 差分として残った要素ごとに、過去の設計判断の記録(設計ドキュメントの決定欄・却下した代替案の欄)を検索し、「採用していた時期があるか」「外した記録があるか」を照合する。
- 外した記録があるなら、見るのは当時の却下理由がまだ成立するかだけ。新しい語彙が付いたことは却下理由の失効ではない。
- 却下理由が「コストの予測可能性」「事故の再発防止」に属するものは特に巻き戻しやすい。新語彙はたいてい能力(できることが増える)を売りにし、こうした制約側の価値は語彙の外にあるため対応表のどの行にも現れない。
一般化した例
- 反復レビューを固定回数へ削り、受け皿を自動検査と改善ループへ移した手法に、実行時に工程が自己増殖する編成を足す提案 — 動的な編成は反復の一般化であり、削ったコストが別名で戻る。
- 作業単位ごとにワーカーを使い捨てる規律を、誤配送や意図しない再稼働の事故から獲得した手法に、永続コンテキストを持つ常駐ワーカーを足す提案 — その規律が防いでいた事故クラスの再導入になる。
落とし穴
対応表の「カバー済み」判定は、名前が違うだけの同型要素を弾くには効くが、正反対の設計(意図的に採らなかった側)は「未カバー」に見えるため素通りする。却下の記録を明示的に検索しない限り、構造的に検出できない。裏を返せば、却下理由を記録していない手法にはこの軸を適用できないので、却下案を残す運用とセットで成立する。
検証
取り込み後、その要素が触る工程の実測値(所要時間・事故件数・手戻り回数)を数件分で確認し、外す前の水準へ戻っていないかを見る。戻っていれば当時の却下理由がまだ生きている証拠なので、語彙ごと採用した部分を切り戻す。