後付けで導入した識別・分類の仕組みは、導入前の資産に構造的に効かない
設計判断
データマイグレーション
プロセス改善
判断
原則
既存の資産群へ後から識別子や分類軸を導入するとき、新しい仕組みは導入後に生まれたものにしか付与されない。これは自明に見えて、下流の判定を設計するときに見落とされる。特に悪いのは、新仕組みが今まさに対処したい旧資産にこそ効かないという反転が起きること。
現れ方(異なる領域の同型例)
- 自動削除のマーカー方式: 「自分が配布したファイルだけを安全に消す」ために管理マーカーを埋め込む設計は健全だが、マーカーを今回導入したなら、既に配布済みの旧ファイルにはマーカーが無い。つまり掘り起こしたい対象に削除条件が発火しない。
- 集計の安全ガード: 「タグ付きが全件の半数に満たない間は分布を使わない」というガードは、過去分が恒久的に無タグの場合に分母が下がらず、新しい分類が長期間不活性のままになる。
設計時の規則
- 下流の判定(ガードの閾値・分母・削除条件)のスコープを、新仕組みが適用される範囲に限定する。全件を分母にしてよいのは、過去分も遡って付与する場合だけ。
- 旧資産へは別の経路を用意する。識別子に依らない照合(本文内容の比較・属性からの導出)をフォールバックとして明記する。識別子での絞り込みだけで「該当なし」と判定しない。
- 旧資産の一括遡及付与は、得られるのが過去分布だけなら見送る。必要になった場面で必要な分だけ補う方式が安い。ただしその場合は上記のフォールバックが必須になる。
- 安全側の倒し方を決めておく。削除系では「誤削除より残存」が安全なので、発火しないことを受け入れて手動判断へ倒す。その上で「この仕組みは次回以降のためのもの」と割り切る。
検証
導入直後に、既存資産のうち新仕組みの条件を満たす件数を数える。ゼロなら、その仕組みは少なくとも当面は動かないと明示し、旧資産向けの代替経路が手順に入っているかを確かめる。「導入した」ことを「効いている」と読み替えない。